公開日:2024/08/19
「サステナビリティの領域での公認会計士のキャリア」
CPASS for Womanのサポーターを務めている永塚真由です。
まずは、簡単な自己紹介をさせていただきます!
◆自己紹介
2013年(当時大学3年)に会計士試験に合格し、大手監査法人に入所。
→監査+αの専門性を身に着けたく、大手生命保険会社の会計監査を7年ほど経験。
→第一子の産休・育休を経て通常業務から離れることで、自分の会計士としての可能性を拡げたいと考えるようになり、同法人のサステナビリティ部への異動を決心。異動後は、法人内でのサステナビリティサービスの拡大に向けた情報共有の基盤の整備や実績管理、社内研修等のアップスキリングの企画・運営をメイン業務とし、クライアント業務(サステナビリティ・アドバイザリー業務)も両立。
→現在は第二子の育休を取得中。夜中起こされるので寝不足の日もありますが、近所をお散歩したり、ママ友とランチしたりと楽しくやっています。
今回は初回のコラムということで、サステナビリティの領域における公認会計士の活躍の場について書きたいと思います。(私もこの世界に飛び込んで1年半で、まだまだ新米ですが・・・)
◆なぜサステナビリティが注目されるのか
ここ数年、ビジネスシーンやニュース、テレビなどでも、いわゆる「サステナビリティに関連するキーワード」がたくさん語られています。
サステナビリティというと、地球環境の保護をイメージされる方が多いかと思いますが、それは経済格差、社会格差などの社会問題や人権、教育、ジェンダー、健康、食生活など私たちの生活のあらゆるテーマをカバーしています。実は、その考え方は30年以上前から存在するのですが、2015年の国連サミットで国際目標である「SDGs」が採択され、世界中でサステナビリティの概念は社会全体に広く浸透するようになり、企業による環境保護活動や社会貢献活動などに高い注目が集まるようになりました。
また、多くの人々がコロナ禍の生活を経験することで、生活者の社会に対する意識全般に変化し、サステナビリティに対する意識が一気に加速したといわれています。
◆公認会計士が活躍できるサステナビリティ領域の業務
では、公認会計士が活躍できる(会計の経験を生かせる)サステナビリティ領域の業務にはどんなものがあるでしょうか。
主には、以下のような業務と考えています。
①サステナビリティ情報の保証業務(※)
企業の非財務情報に対して、投資家をはじめとするステークホルダーの関心が高まるに従い、温室効果ガス(GHG)排出量や女性管理職比率といったサステナビリティ情報の「信頼性」がこれまで以上に重視されるようになっています。
重要なサステナビリティ情報の第三者保証を受ける日本企業は、年々増加しており、2020年時点のKPMGあずさサステナビリティの調査によると、日経225銘柄の225社のうち62%の会社がサステナビリティ情報に対する第三者保証を受けているようです。
2023年3月期以降の有価証券報告書では、サステナビリティの記載欄が新設され、開示が義務付けられました。それに対する保証は、今のところ日本では義務付けられていませんが、欧米では既に財務情報の会計監査人が非財務情報に対する保証を実施することが決まっており、日本でも現在の会計監査の延長のような形で、非財務情報の保証(将来的には監査)が義務付けられる可能性が高いと言われています。
(※)保証業務とは、「適合する規準によって主題を特定又は評価した結果である主題情報に信頼性を付与することを目的として、十分かつ適切な証拠を入手し、主題情報に対する結論を報告する業務」をいいます。例えば、サステナビリティの領域では、以下のようになります。
・適合する規準=GHGプロトコル(温室効果ガスの排出量を算定・報告する際の国際的な基準)
・主題=GHG排出量(スコープ1~3)
・主題情報=サステナビリティレポート
②有価証券報告書や統合報告書、サステナビリティレポートの開示支援
多くの企業が、サステナビリティに関する取り組みや成果、課題を有価証券報告書、統合報告書、サステナビリティレポート等の開示媒体により、報告するようになりました。しかし、開示ルールが乱立している背景もあり、その開示は企業により様々であり、企業ごとに創意工夫が求められる状況です。
公認会計士は、会計監査や会計アドバイザリー業務で投資家向けの開示に慣れ親しんでいることも多く、よりステークホルダーへの訴求力が高い開示のアドバイスを提供することができます。
③欧米等におけるサステナビリティ開示規制への対応支援
2023年1月、EUのサステナビリティ開示規制であるCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)が発効しました。この規制が日本企業に与える影響は大きく、EUで一定規模以上の事業を展開している日本企業に対して、連結ベースでのサステナビリティ情報の開示が義務付けられる可能性があります。また、非常に複雑で多岐にわたる内容であり、かつ保証も求められることから、各開示項目を適切に理解したうえで、情報収集や集計についても内部統制やシステム導入といった視点を持つことが必要となります。そこで、公認会計士の知見や専門性を発揮することができます。
一方、米国でも米国証券取引委員会(SEC)が、投資家からの気候変動に関する開示の充実を求める声に応じる形で、2023年3月に気候開示の規則案(気候開示規則案)を公表しました。この規制についても、SECに上場している日本企業は対象となります。
④環境会計・自然資本会計等のサステナビリティ戦略立案支援
企業がサステナビリティを考える上で、環境会計や自然資本会計が重要な位置を占めるようになりつつあります。経営上の意思決定に、環境保全コストの管理や環境保全への取り組みの測定結果が大きな影響を与えることも少なくありません。
公認会計士は、環境会計や自然資本会計に関するアドバイスを提供し、適切な管理・運用を支援することができます。
◆最後に
以上からわかるとおり、サステナビリティの領域では、様々な形で公認会計士としての知見やスキルが求められていますし、将来的にもそのニーズは加速すると予想されます。業界の動きが非常に早く、世界規模で動いていくので、継続的に最新情報を拾っていきましょう!