公開日:2024/09/24
株式会社リアルゲイト 木内有子
Q:これまでのキャリアと現在のお仕事について教えてください!
弁護士だった父からの「これからの女性は結婚しても経済力を持ったほうがよい。そのために資格を取得しておくとよい。」という言葉に感化され、大学は将来の選択肢が広そうな商学部へ進学しました。当初、大学ではテニスサークルに入ろうと思っていましたが、片道2時間の通学でクタクタとなり、新歓活動を後回しにしていたところ、気付いた頃には時すでに遅しでテニスサークルの入会締切日が過ぎていました(!)。そんな折、偶然、クラスメイトが”会計研究会”に入っていることを知り、当初は”会計研究会って何が楽しいん?”と懐疑的でしたが、そのクラスメイトから「自分、大学へ勉強しに来てるんやろ?」と至極真っ当な指摘を受けて、“確かにその通りだ”と思い、新入生も100名近く入会していると聞いて勢いで入会しました(笑)
そこから簿記2級まで合格し、簿記は勉強すれば結果につながるという自信が芽生えました。また、丁度タイミングよく、大学に公認会計士の方が監査法人の業務内容等を紹介しに来たことがあり、その場で「関関同立に合格できたなら会計士も目指せば受かる!」と話されたのを真に受けて会計士を目指す決断をしました。両親は「会計士を目指すなら、めちゃくちゃ覚悟がいるよ、3年はかかると思う」と言いながらも、「本気で目指すのであればその間生活はみてあげる」と後押ししてくれました。ただ、当時は試験科目に経済学が必須で、バリバリ文系の私は大苦戦…。経済学で登場する長い数式を見ただけで寝込んでしまうほど苦手で、いつも足を引っ張り気付けば両親から言われた”3年”も過ぎる始末。このままでは一生受からないと撃沈していた矢先、経済学が選択科目となり、代わりに民法での受験も認められるようになり、民法に切り替えた5回目の挑戦で何とか合格することができました。
会計士試験合格後、今のあずさ監査法人の大阪事務所に入所します。当時の大阪事務所は、大規模クライアント毎にセクターが分かれており、私も某グループ会社のチームに入り、その系列会社を中心にアサインされ、色々な業種の監査を経験しました。人手不足もあり、入所3年目辺りからインチャージが回ってきて、周りに助けられながら仕事をこなす日々でした。当時の監査調書は手書きでしたが、監査調書に監査目的から監査の結論までしっかりと記載するドキュメント作成スキルは現職で監査役の監査調書を作成する際にも大いに役立っています。その後、31歳で結婚し、33歳で長女を、34歳で長男を出産します。会計士試験に苦労して合格し、ようやく掴んだBig4の肩書でしたので、当初はあずさ監査法人に長く勤め続けるつもりでしたが、夫が転職で東京にいくことになり、実家にも頼れないで年子を育てていかなければならないこともあり、第2子(長男)出産後の復職を断念し退職します。その後次女も生まれ、10年以上、(ダイコロ株式会社の非常勤監査役を除き)仕事はしておらず、3人の子育てが楽しかったこともあり主婦業に専念する日々を過ごしました。子供が3人いるとPTA役員やクラブ活動のお手伝い等で、下手したら子供よりも学校に行っているのではないかと思うくらい学校に行っていましたね(笑)。主婦業に専念し、サラリーマン社会からは一旦離れたものの、地域や学校が新たな社会となり、子育てを通じて良い人間関係を築けたのも振り返ると良い経験であり財産になったな、と思います。他方で、この間も、「公認会計士」と入った個人名刺も作成し、会計士登録を抹消することはしませんでした。母からも、事あるごとに「せっかく苦労して会計士資格をとったのに子育てばかりでもったいない」と言われていました。
その後、子育ても落ち着いた2019年の春頃、一念発起して仕事復帰を目指し行動を開始しました。大阪時代の会計士の友人と時を経て東京で再会したときに、声をかけてくれたことも私の背中を押してくれたので、とても感謝しています。キャリアが中断していた時期が長かったのですが、エージェントから常勤監査役でフルコミットできるなら需要があるだろうと聞き、履歴書等の準備を進めていたところ、偶然、知人経由で現在常勤監査役を務めている株式会社リアルゲイトの常勤監査役のお話を頂きました。お話を頂いてから、会社のHPを隅々まで見て、業績がきれいに階段状に伸びており、最初は寧ろ「こんなにきれいに成長する?」と疑心暗鬼で見ていたものの、社長面談時に社長が「会社はやるべきことをすれば必ず成長する、守るべきことをきちんと守って一流の会社にしたい」ということを仰っており、コンプライアンス意識も高く立派な経営者と尊敬できたこともありお引き受けすることになりました。
私が入った当時のリアルゲイトは上場を目指し内部統制を整備したフェーズでした。役員、そして、社員の皆さんが上場に向け必死に準備されている姿を見て、私は監査役の立場上、中に入って手を動かすことはできませんが、監査役としての上場審査対応では重要な監査手続きの漏れが無いように、また、監査調書の内容に矛盾や抜け漏れがあり、それが審査に影響することがないように細心の注意を払いました。コロナ禍など、大変なこともありましたが、2023年6月にグロース市場へ上場できました。上場前後で変わる会社・変わらない会社があると思いますが、リアルゲイトの場合は後者です。上場当日こそ社内は胡蝶蘭で溢れ、ささやかなパーティーが開催されましたが、社長筆頭に上場はスタートにすぎないという考えでいます。不動産ビジネスとしてまずは安全を重視して、オーナー様や入居者様に喜んでいただけるように、日々業務に取り組む姿勢は何ら変わっていません。私自身も上場の審査対応が無くなった分、今は監査役としての業務を、より丁寧により余裕をもって進めていくことを意識しながら従事しています。
Q:お仕事のモチベーション、やりがいを教えてください!
監査法人時代の会計監査以上に、監査役監査は幅が広く業務監査も必要となります。業務監査の一環として重要な会議に出席していますが、特に役員会の1歩手前で実施される経営会議には必ず出席し、執行サイドがどのように業務上の意思決定を行っていくのか、その判断の過程を見ることでビジネスをより深く理解することもでき、興味深いと感じています。
また、就任当初は、社員の平均年齢が30歳くらいと若く(どちらかといえば子供のほうが世代が近い)、また、突然外から常勤監査役として入ることで警戒されないか心配でした。社員の皆さんとのコミュニケーションのとり方について実はとても悩んで「話し方の学校」という学校にも通いました。そこで、スキル以上にマインドが大切だと学んでから、まだまだ模索中な部分はあるものの、だんだんと面談や雑談を通じて社員の皆さんとコミュニケーションをとれるようになってきていると実感しています。
「監査役=嫌われ役」というイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますし、私自身も自分に「監査役は嫌われてなんぼ」と言い聞かせて1人苦しんだ時期もありました。ただ、世の中に嫌われて良い仕事はありません。監査役と取締役は監査をする側とされる側という立場の違いはありますが、どちらも会社をより良くしたいと思い、同じ方向を向き、同じ志を持つ存在です。そのようにマインドチェンジしてからは、よりモチベーション高く監査役の業務に誇りを持てています。
Q:スキルアップのためにしていることを教えてください!
私自身、主婦業に専念していた期間から10年以上ぶりの復帰でしたし、またJ-SOXが入る前に現場を離れたのでブランクが本当に心配でした。就任当初は、まずは座学で知識のアップデートをしようと思い、「監査役」と名の付く書籍を読み漁りました。すると、その中で眞田宗興氏のご著書「監査役事件簿」というタイトルの本に出合ったのですが、その中に”監査懇話会”というワードが出てきました。調べみると実在する団体で、体験セミナーに行ってみると経験豊富な監査役の方々が在籍されており、生の声が聞けてとても良い刺激を受け、学ばせていただきました。今は、監査懇話会をはじめ、監査役協会や女性会計士で常勤監査役の方々が集まるJKKでの勉強会等に知見を広め深めるために積極的に出席するようにしています。また、最近では、監査役就任当初非常にお世話になった監査懇話会で、監査基礎講座の運営委員をしており、年に1回講師もさせていただいております。
上記と並行して、株式会社リアルゲイトは不動産会社のため、その監査役としてビジネスの理解を深めるために、2023年の秋、宅地建物取引士の資格を取得いたしました。
Q:自分へのご褒美は何ですか?
子供が小さい時は、自分のやりたいことが子供といることで、3人の子供達と十分に濃い時間を過ごせたので、それが日々ご褒美だったのかなと思います。
今は、自分の自由時間ももてるようになってきたので、”会いたい人には会いに行く””行きたい場所にはいく””食べたいものを食べる””好きな服を着る”というように自分のやりたいことは割とさっさと叶えるようにしています。また、そういう楽しみを日々のスケジュールの中に散りばめることにより、大体ご機嫌に過ごせていると感じます。
Q:仕事とプライベートそれぞれ目標や夢を教えてください!
仕事・プライベートどちらも、これからは、もっと「人」と関わりたいと思います。
人として「どうあるべき」か自らを振り返りつつ、ちょっとしんどいなと感じている人の話を聞かせていただくことにより、その人が少しでも元気になれるような、そんな存在になるのが夢です。
Q:育休復帰後の働き方の工夫を教えてください。
私の場合、2人目出産後に復帰を断念し監査法人を退職してしまいましたので、復帰される方のご参考にはならず申し訳ないです。「もっと子どもと一緒にいたい」「仕事も子どももどちらも大切なのでどちらも頑張る」「子育て環境をばっちり整備して仕事を思い切り頑張る」など、人によって大切にしたいものやその比重はそれぞれだと思います。
“自分が本当に今一番大切にしたいことは何か?”ということを意識して、後悔のない時間の過ごし方をするのが良いと思いますし、会計士の資格があることで、選択肢が広がると思います。
私は比較的短期間に3人の子どもを出産し、末っ子が小学校高学年になるまで超ゆるキャリで育児に専念しました。子育て期間は大変なことももちろんありましたが、とても楽しく心が満たされる時間をすごせたと感じているので、それ自体に後悔はありません。また、ブランクがあっても、「会計士」という資格があったため、社外監査役に就任し、今、再びフルタイムで働くことができています。
これはほんの一例にすぎませんが、ブランクがあったとしても、ゆるキャリでも会計士資格があれば帰ってこれるということが1人でも多くの方に伝われば嬉しいです。
(写真)ファミリー。小さかった子どもたちも本当にあっという間に大きくなりました!
Favorite
Book:#あり方で生きる(著:大久保寛司氏) #会社は変わる(著:園田ばく氏) #いま、目の前にいる人が大切な人(著:坪崎美佐緒氏)
今年、これらの『伝説の3部作』に出会えて、自分自身もっと成長したいし変わりたい!と強く思いました。
Person:#ひすいこうたろうさん
とにかく癒されます。本もYouTubeもインスタも大好きです。
Motto:#ご機嫌でいること♪
PRIVATE PHOTOS
仕事アイテム
スタバのタンブラー(一年中桜の柄のものを使っています)
余裕があれば朝、職場近くのスタバでコーヒータイムを過ごして心を整えてから出勤します。
リラックスアイテム
家ではだいたいいつもお花を飾っています。お花とキャンドル、観葉植物、お香、アロマオイルに癒されています。
プライベート
先日、「話し方の学校」の同期である友人の講演会で司会をさせていただきました!
この記事を書いた人