
公開日:2025/05/08
株式会社メルぺイ/佐野京子

(2012年)大学2年生で会計士試験合格
会計士試験には大学2年生で合格しました。高校が大学の附属校であり、内部進学で大学生になれるため、高校1年生の時は受験勉強から解放された反動で毎日遊んでいました。そんな生活を続けて1年ほど経った頃、大学卒業までの7年間このまま遊んでばかりの生活を続けて、いざ社会人になった時に”一体、私は何を武器にして戦っていけば良いのだろう…”と我に返って将来を真剣に考える瞬間がありました。
そんな中、部活のメンバーで遊んでいた時に、先輩方が”大学に入学したら会計士を目指す”という会話を始めたことを契機に、私も会計士がどんな職業か興味を持つようになりました。そこから予備校のセミナー等に参加して情報収集を行い、独学で簿記2級まで取得したことで自分に向いていると思ったため、高校3年生の秋から予備校に入り本格的に受験勉強を開始しました。当時通っていた予備校は大学の近くで、同じ大学のメンバー間の団結力が強い点が特徴でした。校舎で過ごすうちに先輩方から歩み寄ってくださったことで親睦も深まり、この人たちと受かりたいと思ったことが受験勉強中のモチベーションとなりました。
(2014年)ファーストキャリアは税理士法人を選択
会計士のファーストキャリアは「監査法人」というイメージが先行していると思いますが、私は敢えて税理士法人を選択しました。そもそも合格時に同世代がいなかったため、周りと違うルートを歩むことに不安はあまり感じませんでした。監査法人ではなく、税理士法人を選択した理由は大きく2点あります。1点目が早く成長できる仕組みがあること、2点目が英語を使う場面が多いことです。以下、監査法人との具体的な違いも踏まえてお話しします。
1点目の早く成長できる仕組みとして、監査法人と税理士法人でチームの人数が異なることが挙げられます。監査法人の場合、通常はクライアントの規模に応じてチームの人数も変わると思いますが、税理士法人の場合はクライアントの規模に関係なく基本的に1法人につき4名体制(パートナー、マネージャー、シニアスタッフ、スタッフ)で、最も年次の若いスタッフが窓口となります。繁忙期になれば担当する社数は数十社となり、自走して業務を回さないと何も動かなくなってしまうため、スピード感ある仕事スタイルが身につきそうだと思いました。現在は当時とは異なる体制になっていると聞きますが、当時は事業部の区分が金融/非金融の2つに分かれており、提供するサービスも監査業務とは違い、クライアント毎の要望に応じてカスタマイズする(申告書対応、M&A対応、調査レポートの作成等)ため、その都度知識のキャッチアップが必要で、そうした点も大変そうであるもののやりがいがありそうと感じました。
2点目の英語を使う場面が多い点について、監査法人の場合は、Big4であってもやりとりするお客様の大半は日本人で日本語でのコミュニケーションが基本ですが、税理士法人で私が担当したお客様は大半が海外の方であり、メールのやり取りのベースは英語でした。
以上の観点から、鍛えられそうと覚悟して入所しましたし、入所後も思った通りハードな働き方をして随分鍛えられたと感じています。税務の話は日本語での説明も難易度が高いですが、これが英語での説明となると一層レベルアップすることから、入所後も空き時間があれば税法の書籍を読むか英語の勉強をして過ごす日々を送っていました。上述したとおり、スタッフが窓口となるので、案件がクロージングした後にお客様から感謝のDMを頂いた際は、毎回保存してモチベーションにしていました。税理士法人時代に培った仕事の進め方等の基礎的な土台とインプットした知識は、事業会社に転職した後も大いに役立っているので、ファーストキャリアとして選択したことに後悔はありません。
(2019年)事業会社(株式会社メルカリ)への転職とグループ間異動
税理士法人で3年ほど働き、税務に関してはどんな案件でもある程度自分の力で何とか回答にたどり着くことができるレベルまで到達したという自信がついたこと、さらに、税理士法人は良くも悪くも関与できる領域が税務に縛られており、せっかく会計士資格を持っているので会計の仕事も挑戦したいという思いが芽生え、体力があるうちに次のキャリアを探ろうと転職活動を開始しました。数ある選択肢の中でも事業会社を選んだのは、これまでクライアントファーストのビジネスだったことが要因で業務時間が長くなる傾向があったことから、交渉相手が社内の人の方が時間の融通も効くのではないかとワークライフバランス面を重視したからです。さらに、事業会社のうち、自分の興味と業界別の年収の観点でIT系に絞って面接を受けました。そして、最終的にメルカリGへ入社を決めたのは、1on1で数名の社員とカジュアル面談をした際に、ポジション関係なく仲の良さが伝わったこと、お会いした方がどの方も腹を割って話して下さり信頼できそうに思ったからです。
転職直後の動き方は人それぞれと思いますが、私の場合は、”この人に業務を任せて大丈夫”と信頼していただけることが大切だと考えていました。この点、前職の経験から自分の強みは税務でしたし、転職当時はメルカリG内でも税務メンバーが足りていない状況だったため、最初はメルカリでも税務メンバーからスタートし、グループ内の税務の基礎固めの構築に貢献しつつ、いずれは会計領域を担当したい旨を面接の段階から共有していました。そのため、入社直後は税務メンバーでしたが、入社して10カ月後に、メルペイの立ち上げ期にジョインする形でメルペイ経理に異動しました。
メルペイ経理では、主に3つの業務(「①決算業務」「②税務業務」「③会計システムの開発」)に関与していました。中でも、特徴的なのが「③会計システムの開発」だと思います。メルペイの場合、会計システムは自社開発のため、アプリの挙動に沿うように仕訳を工夫する等、会計要件とシステム要件を擦り合わせ、エンジニアと協力して進めていく必要があります。そのため、通常の経理知識だけではなく、システム要件の知識も必要で独特なシステム用語やデータベースの考え方にも最初は苦労しました。これらの経理の業務を1人前にこなし、貢献できる感覚を持つのに1年程度はかかった気がします。
(2021年)20代後半で経理マネージャーに就任
“何事も機会があるならば早めに経験していた方が良い”と考えている性格なので、マネージャーになりたい旨は自分から上司に相談していました。結果的に入社して2年後に就任できたのですが、上述したとおり、経理の仕事で自走できるようになるまでに1年費やし、残りの1年でマネージャー就任に向けて経理の全体業務を把握することや当時動いていたプロジェクトで次期マネージャーに相応しい貢献をすることに注力していました。
20代後半でマネージャー就任は弊社の中でも早い方でした。弊社の場合は、マネージャーは出世というよりは役割の1つという考え方をしています。一方で、マネージャーの役割として、メンバーに業務を指示することになるので、多少上からに感じとられかねない場面は現実的に発生します。当時、経理グループの中でも年齢的には一番下で、周囲のメンバーは年上かつ実務経験が長い方ばかりだったため、「私なんかが指示を出して大丈夫かな…」という不安と葛藤で最初の1ケ月は悩んでいました。
そんな状況を打破する契機となったのが、経理関係の交流会で偶然出会った50代くらいの経理部長のお言葉でした。恐れ多くも大先輩にあたるその方に、「周りのメンバーが10歳程年齢も上で実務経験も私より豊富な中、どのように経理マネージャーとして役割を果たしたらよいか分からない」と素直な心境を吐露しました。すると、「君がそんな自信がなくてどうする、君がちゃんと自信をもって指示してやらないと、メンバーがどこに行ったらいいか分からないだろう」というメッセージをいただきました。その喝を受け、翌週から意識を改め、メンバー1人1人に、やってほしいタスクと求める水準感・期待値を明確に指示するとともに、あなたならできると思っているので一緒にやっていきましょうという言葉を投げかけるようにしました。その些細な言動の変化で、メンバー1人1人の顔がすごく輝いて見えて、その時に初めて自分の中のあるべきマネージャー像が見えた気がしました。それ以来、自分が年下だからといって遠慮せず、マネージャーは役割であると割り切るようになりました。また、メンバーに信用してもらうように言動の一貫性をとり、自分ができないことを押しつけない等、人間として誠実であることを心がけるようになりました。マネージャーは責任も重いですし楽ではないですが、誰しも1人では仕事ができない中、皆で協力して大きい仕事をやり遂げた時の達成感も格別でした。若くして経験できて良かったと思っています。
(2024年)経理から経営企画への異動
上述したとおり、入所して5年間は税務・経理メンバーとして過ごし、その過程でM&A時の税務上有利なスキームの検討や大規模な節税プロジェクトなど難易度の高い業務に挑戦する機会を頂きました。また、経理マネージャー経験も3年ほど積み、採用や自分より経験豊富なメンバーのマネジメントにも挑戦させていただきました。他方で、それなりの年数も経ったことから、自分の中でも税務・経理の仕事はやり切った感覚があり、年齢的にも30歳を過ぎ、再度自分のキャリアを見つめ直す瞬間が訪れました。私くらいの年代だと、恐らく定年は70歳頃までに伸びるのではないかと考えると、まだ社会人歴10年にも関わらず、現段階で経理分野にキャリアの主軸を絞るのは時期尚早ではないかと思いました。
これまでの経験を活かしつつ、安全圏を出るためにも、自分のできる範囲を増やしたいと思い、自主的に経営企画へ異動を希望しました。現在は、経営陣への業績報告や予算管理、新規事業の事業計画策定などに携わり、数字面で事業のグロースに貢献できるように日々奮闘中です。

組織内会計士として意識していること
資金が潤沢にある会社は、会計士をわざわざインハウスで雇わなくても、お金を出せば最新の会計知識を会計事務所から入手できます。そんな状況下において、会計士が事業会社の中で働いている意味や発揮できるバリューは何かという視点は意識しています。
私個人の考えとしては、組織内会計士の1番の強みは、外部からは踏み込むのが難しい「事業の中身の理解」だと思っています。そのため、事業に対して寄り添う姿勢と、そこに対して自分の会計・税務知識を組み合わせて提案していく積極性を大切にしています。例えば、弊社の例ですと、最近アプリに追加された機能の情報や、リアルタイムで進行しているキャンペーン等を踏まえ、留意すべき会計・税務論点や開示への跳ね方を事前に検討しておくようにしています。
また、インプットのために意識的に読書をしています。ジャンルは、会計・税務だけではなく、人事・システム・マーケティング・デザイン・コンプライアンス・法務など他分野も読むようにしています。会計・税務の観点だけで「こういうアクションをとったほうが良い」と主張しても事業会社ではあまり意味がなく、他の観点でノックアウト要件がないかを検討した上で提案していくほうが望ましいためです。自分で少しでも気が付けるようになっておくと、社内の専門家へつなぐスピードが早くなりますし、論点の見落としも防げます。
キャリアの考え方
かなり遡るのですが、小学生の時に”80歳までの人生計画”を考える授業がありました。その時に、幼いながら、資格を取って何かしらのプロになって頑張りたいという内容を書いていました。当時は弁護士が良いかなと思っていたのですが、会計の方に興味が変わり会計士になったという変化はあったものの、基本は当時立てたプロセスに結構沿って人生を歩んでいる気がします(笑)
逆算してゴールを決めて、そこに向かって自分で方向性を調整しつつ努力していくことが、自分の目標を叶える近道だと思います。社会人になってからも、上司には、数年後に目指したい姿やその目標に到達するために今後必要な経験や挑戦したい業務を事前に共有するようにしています。何も希望を言わない社員に対して、会社側も察して動いてくれるわけではないので、言語化して共有しておく方が自分の理想のキャリアを築けるのではないかなと個人的には思っています。
余談ですが、小学校で一緒の授業を受けた友人も当時立てた人生計画通りのキャリアを歩んでいる方もいます。実は、サッカー選手の三苫選手も同じ小学校で、インタビューの中で同じ授業を受けたと書かれていたので狭い世界の話ではありますがかなり有益な授業だったのではないかなと思っています。
女性会計士へのメッセージ
私にとって会計士資格は、ディズニーランドの昔のファストパスのようなものです。仕事の最初の入口で「会計士資格があるから優秀なはず。若くても任せてみよう」と思ってもらえることで、通常よりも早く難易度の高い業務を任せてもらえていると思います。ただし、あくまでもファストパスなので、実際に業務で成果を出さないと次はないですし、楽しめるかどうかも自分次第です。資格はあくまで入口への時間が短縮されるだけのもので、そこから先は常に成長し続けるために行動することが大切だと思っています。
また、私は逆算思考を意識してここまでキャリアを歩んできましたが、様々なキャリアの参考事例の1つとして受け止めていただきたいです。私自身も社会人3年目頃まではロールモデルを作ろうと思っていましたが、結局見つからなかったので、特定の人を参考にしていたわけではありません。この記事を見てくださっている方は現在監査法人で働いている方も多いかもしれませんが、修了考査が終わるまでは監査法人にいるべき、逆に周囲が転職するタイミングで転職活動を始めないといけない、等の固定概念に囚われる必要はありません。まず、“こういうキャリアを歩んでみたい”という理想を掲げ、その材料として現職での働き方を自問自答し、まだ経験すべきことがあれば残るべきだし、十分な力がついたと満足しているならば転職活動を考えてみてもよいのかなと思います。周りに流されず、自分の軸で自分なりのキャリアを歩んでいただければと思います。

Favorite
Youtube:#メイク動画 #旅行動画
Motto:#とりあえずやってみること(やって後悔する可能性はあるが、やらないと100%後悔するため)
PRIVATE PHOTOS

仕事アイテム
コロナ以降、在宅勤務がメインとなったため、家の仕事環境は整えました。声が相手に聞こえづらいとストレスになるため、マイクは良いものを使っています。

リラックスアイテム
入浴剤の効能に懐疑的でしたが、これは唯一効果を感じました。
発汗作用があって、香りもリラックスできます。

プライベート
泊まれるレストラン、ひらまつのホテルに夫婦でよく泊まります。
写真はこのまえ熱海に泊まった際のウェルカムドリンクとスイーツです。
この記事を書いた人